assetforce導入で棚卸業務を効率化し、固定資産の期中管理をスムーズに
2023年に創業110周年を迎える老舗の菓子メーカー・カンロ株式会社は、売上の約97%を飴とグミキャンディが占める日本有数の菓子メーカーです。近年全社で注力しているDX推進に伴い、山口県のひかり工場、長野県の松本工場・朝日工場の3工場における棚卸業務にassetforceを導入。これまで担当者が表計算シートや紙台帳で管理していた固定資産管理を、assetforce上のワークブックを活用した情報共有や、スマートフォンアプリを活用した棚卸作業に転換したことで、作業工数の削減と担当者の負担軽減を実現しました。
assetforce導入の背景や導入効果について、同社の研究・技術本部エンジニアリング部の浜口勝彦様、猪熊靖明様、朝日工場 設備管理チームの小林良成様にお話を伺いました。
カンロ株式会社
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- 本社所在地
- 〒163-1437 東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティビル37階
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- 設立
- 1950年5月 (創業:1912年11月)
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- 代表取締役
- 村田 哲也
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- 資本金
- 2,864(百万円)
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- 従業員
- 608人(2022年12月末現在)
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- WEBサイト
- https://www.kanro.co.jp/
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- 事業概要
- 菓子、食品の製造および販売
課題と効果
- 導入前の課題
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- 工場の固定資産の棚卸業務が、複数の担当者によるアナログ作業(目視、資産番号の読み上げ、紙のリストとの照合など)のため、作業負荷が大きく、効率性やスピード感に大きな課題があった
- 工場設備は工場間で移動させ活用するケースが多いため、期中での設備の所在や稼働の管理業務が煩雑になっていた
- 導入後の効果
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- 棚卸・期中管理に携わる担当者の人員・工数を半減
- スマートフォンアプリを活用したQRコードのスキャンによる棚卸業務の負荷軽減
- ワークフロー機能とワークブック機能の活用による工場設備の移動管理と管理情報のリアルタイムな共有の実現
- 工場間を移動する固定資産の管理情報や会計処理の正確性の向上
選定のポイント
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- ❶専任スタッフの作業負荷の軽減と工数削減を実現
- 棚卸における目視、読み上げ作業、紙台帳との照合などのアナログ作業が、QRコード化された資産プレートをスマートフォンでスキャンするだけの業務に簡略化できる
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- ❷セキュリティ対策が万全なインフラの利用
- クラウド環境や、スマートフォンアプリの利用においても、自社のセキュリティ基準に合致したセキュアなインフラ環境を利用することができる
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- ❸自社固有の業務にもフィットできる柔軟なシステム設計
- 自社の承認フローに合わせた構築・設定が可能なワークフロー機能、自社の管理ルールに即した資産管理項目や画面の表示項目の変更など、現場ニーズに即して柔軟な設計を行うことができる
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- ❹スマートフォンアプリの利用によって、導入時の機器に関する費用の削減
- 社用のスマートフォンにassetforceアプリをダウンロードするだけで棚卸のデバイスとして活用が可能となり、導入時の機器に関する費用が不要となった
assetforce導入の決め手は、自社独自の課題にもフィットする「柔軟性」と「拡張性」
―― assetforce導入検討以前に、御社が抱えていた課題を教えてください。
浜口勝彦様(以下、浜口/敬称略):私と猪熊が所属するエンジニアリング部管理統括チームでは、固定資産管理が主たる業務になるのですが、その固定資産の約90%以上が工場の設備や建物です。
弊社は山口県に1か所、長野県に2か所、計3か所に工場を有していますが、多い工場では2,000種類ほどの工場設備があり、その棚卸には工場の担当者スタッフが重たい紙台帳を片手に、管理番号の読み上げと台帳への書き込みを行って対応していました。そのため、棚卸には3日程度費やしており、棚卸作業にかかるスタッフの作業負担が大きく、かつ管理が非常に煩雑な状態になっていました。さらに、工場設備を工場間で貸し借りすることが頻繁に行われるため、その移動履歴の更新が遅れたり、連絡漏れが生じたりすることで、正確な所在が分からない工場設備が発生するという状況も起きていました。
また、工場設備の期中管理業務にも課題がありました。工場設備の稼働状況を会計に報告するため、移動履歴を表計算シートに適宜記録する必要がありました。この作業が非常に煩雑で属人化していたため、担当者の変更時の引き継ぎ作業をスムーズに行うのが難しいという課題もありました。
―― 今回、工場設備の管理にassetforce導入を決定されたポイントを教えてください。
浜口:実はassetforce導入前に、資産管理にも対応した設備保全のシステムを試したことがありました。ところが、このシステムは固定資産管理には特化していない面があり、使い勝手が悪く、むしろ手間が増えてしまうということが分かったため、検討はしたものの導入には至りませんでした。その後、assetforceをご紹介いただいたのですが、固定資産管理に特化している機能がそろっている点やメガバンクグループ基準でのセキュリティが万全なクラウド環境を利用できるという点に魅力を感じました。また、拠点や場所を選ばず、いつでも情報にアクセスでき、部署を超えた情報の共有化も行いやすい。これなら私たちが以前より課題に感じていた工場設備管理の課題解決にも、ぴったりハマるなと思いました。
猪熊靖明様(以下、猪熊/敬称略):加えて、誰でも使いやすい操作性も魅力でした。スマートフォンのアプリを立ち上げれば誰でもすぐに使える。これまで台帳を抱えて、読み合わせと手書きで行っていた棚卸作業が、スマートフォンアプリでQRコードをスキャンするだけで完了します。これは担当者の作業負荷の大きな軽減になると感じました。
浜口:社員に支給されていた携帯電話が、ガラケーからスマートフォンに切り替わるタイミングが、assetforceの導入検討期と重なったこともあり、assetforceのために新たに専用の機器を購入する必要もなかった、というコスト面でのメリットもありました。
また、弊社では試作も含めると毎月新製品の開発を行っているのですが、その際に汎用性のある工場設備を別の工場に移動させるケースが多々あります。それが管理の煩雑化の一因でもあるのですが、移動させた工場設備が今どの工場にあるのかを担当者しか理解していないこともありました。こうした問題は、assetforceのスマートフォンアプリでQRコードを読み取って、情報を更新するフローによって解決できることが分かりました。
その他にも、従来は、機器移動の承認は何人もの承認者が紙に押印をして回付して行っていましたが、assetforceのワークフロー機能を用いることで、承認フローのペーパレス化と、その履歴の可視化も実現できます。さらには、assetforceのワークブック機能※を活用すれば、工場設備の稼働状況も部署間でリアルタイムに共有ができ、生産の効率化に寄与することもできる、と考えました。
※ワークブック機能:複数の資産種類、マスター、関連資産、履歴情報などassetforce上で管理されるデータを、使い慣れたワークブック形式にオンライン上で一度に出力ができます。
猪熊:ワークブックは社内の担当者でも新たな機能を簡単に開発できますし、弊社のワークフローに最適なカスタマイズができる点も、導入決定のうえでは大きなポイントだったと思います。
assetforceの活用によって、長年の課題となっていた棚卸作業が劇的に改善
―― assetforce導入前の棚卸業務において、特に大変だったことを教えてください。
小林良成様(以下、小林/敬称略):まず事前準備として、工場内の設備棚卸チェックシートを作成したうえで、数十枚もプリントアウトする必要がありました。加えて工場設備の位置を記した図面や各種資料を準備しなければなりませんでした。実際の棚卸作業では、3名でチームを組んで作業を進める必要がありました。現場では工場設備に貼ってある固定資産管理番号と、資産リストに書かれている番号を1台ずつ読み合わせて確認していくのですが、この作業には時間がかかり、何ページもある台帳と図面をめくって、手書きで所在をチェックしていくという作業で、とにかく大変でした。また、固定資産管理番号が長いため、数字の読み違いもしばしば生じてしまい、作業がやり直しになってしまう、といったことも起きていました。
――本社からassetforceを導入するというお話を聞いた時、工場の設備管理担当者として、どのような印象を持たれましたか?
小林:最初は口頭だけの説明だったので「よくわからないなぁ」という印象でした(笑)。しかし、説明を聞いていくうちに、作業がかなり楽になりそうだなという印象を持ちました。また、本社の担当の猪熊が何度も工場に来てくれて、assetforceの話を聞くうちに不安は解消されていきました。今回、朝日工場では私と猪熊の2人で棚卸作業を行ったのですが、実際に作業を始めてみたところ「この程度の時間で済むのか」と。すごく簡単で楽になったと実感しました。
猪熊:assetforceを導入したことで、これまでの棚卸作業と比較して、時間と人的な面ではおよそ半減することができました。
小林:現場での棚卸作業だけならば1日もかからずに終えることができました。今回はassetforceを使った初めての棚卸だったのと、QRコードの貼付やリストの整備など、事前準備に少し時間がかかった面もありますが、次回の棚卸からはそうした手間もなくなります。今後の棚卸作業はもっと時間が短縮されるのではないかと考えています。
工場設備の棚卸・移動管理に留まらず、さまざまな業務におけるDX化への対応にも期待
―― 今後、棚卸業務以外にassetforceの活用を新たに検討している業務や展望についてお聞かせください。
浜口:まだ検討段階ではありますが、assetforce上で商品開発部門と設備の情報共有を行うことで、どの工場で何が保管されているかすぐに確認できるようにしたり、その検索性を高めたりできないだろうか、と考えています。
猪熊:工場では予備も含めて多くの部品を保管しているのですが、その種類や個数の管理が正確に行われていない状態です。まずは主要な部品からでいいのですが、各部品に番号を振ってassetforce内で管理できれば、部品の在庫の最適化や、部品が破損した際に他の工場から部品を調達することもできるのではないかと。assetforce導入を機に、こういったアイデアが工場から上がってきています。
浜口:私たちが所属する研究・技術本部エンジニアリング部、経理部、各工場の棚卸業務で活用を始めたところです。当社では、さまざまな業務領域でのDX化を全社的に推進していますので、今後はassetforceを他部署でも活用していくことは十分考えられると思います。
assetforceのすごいところは、こちらのニーズに対して多様なカスタマイズができる点だと感じています。やればやるほど便利になるのですが、あとはこちら側の問題ですね。どれだけ対応できるか(笑)。すでに準備を進めていることで言えば、工場間での設備の貸出や移動の管理への活用といったアイデアも検討にあがっています。
―― 3拠点の工場が保有している固定資産の情報共有を図るためのものだと思いますが、それによって業務上でどのような付加価値が生まれるとお考えでしょうか?
浜口:リアルタイムで工場設備を管理できることが一番のメリットです。assetforceを活用することで、必要とする設備を保有している工場をすぐに確認できますし、担当者間の情報交換や承認作業も格段にスピードアップできると思っています。活用範囲を広げた分だけ作業の効率化につながるので、今後さらにさまざまな提案を行って取り組んでいきたいと考えています。
※2023年1月取材時の情報です。今後、内容が変更されることもありますのでご留意ください。
※「QRコード」の商標はデンソーウェーブの登録商標です。